6年越しで初受賞の女性自身 LINEユーザーに寄り添う“軟らかい配信”の作り方
LINE NEWSでは、毎年12月に開催するイベント「NEWS AWARDS」でメディアの表彰を行っています。
LINEアカウントメディアに参画するメディアを13ジャンルに分け、メディアの配信に対するユーザーの満足度を独自の指標「エンゲージメントランク」でランキング化。年間を通して最も支持を得たメディアを「LINEメディア賞」として表彰しています。
2021年のNEWS AWARDSでは、光文社の「女性自身」が参画から6年にして初の受賞となりました。
前年までは、同じジャンルの29メディアの中で5位前後だった女性自身。どのようにユーザー満足度を高めたのでしょうか。デジタル事業を統括する森本隆二さん、アカウントメディアの運用を担当する越知恭子さんに、受賞に至った配信の工夫や運用のポイントについて伺いました。
運用担当者の努力が実った初受賞
「芸能・社会部門」で初のLINEメディア賞を受賞した女性自身。2015年の参画当初から配信に携わる森本隆二さんは、今回の受賞について以下のように語ります。
「開始当初は、正直それほど運用に注力できていませんでした。しかし昨年、運用担当者が越知に代わってからエンゲージメントランクが上昇していき、部内のモチベーションも向上したのです。越知を中心に若手が頑張ったことが、今回の受賞につながりました。授賞式は他部門の社員や役員も視聴していたようで、いろんな人からおめでとうと声を掛けられ、全員の頑張りが評価されたことをうれしく思います」
受賞に大きく貢献した女性自身編集部の越知恭子さんは、本誌の写真ページを担当する傍ら、アカウントメディアや他のSNS公式アカウントを運用しています。
越知さんは「アカウントメディアではランキングが出るので励みになります。まずはランキング順位を上げることを目指し、順位を上げてからは1位を目標にして、1位を取ってからは年間大賞を取りたいと思い、研究に研究を重ねて今回の受賞となったので、達成感でいっぱいです」と喜びを口にします。
メインユーザーの興味関心を引く“ニュースの主語”を徹底分析
女性自身が属する芸能・社会部門では、これまで小学館の「NEWSポストセブン」が3年連続で受賞。そうした中で、女性自身が今回の初受賞に至った背景には越知さんの“研究”がありました(過去の受賞メディア一覧)。
越知さんは、学生時代のサークルでSNSを運用していた経験はあるものの、SNSに精通しているわけではありませんでした。そんな越知さんが特に力を入れて取り組んだのが、ユーザー層のニーズを読み解くことだといいます。
「注力して見ていたのは『ニュースの主語が誰か』という点です。もともとニュースを作る際、編集部として重視しているのがニュースの主語であり、誰に関するニュースがユーザーに求められているのかという点には注意しました」(越知さん)
女性自身のメイン読者は50代以上の女性です。アカウントメディアで配信する記事のポイントは、その年代の女性たちが、親近感を持っている芸能人や有名人のニュースを選ぶこと。例えばYouTuberに関する記事などは、LINE NEWSのニュースタブなどでよく読まれても、50代以上の女性ユーザーにはなじみがないためアカウントメディアの配信ではあまり読まれないそう。
「アカウントメディアのメインユーザーの方がどんな芸能人や有名人に興味があるのか、どんな情報なら記事をタップしたくなるのか、丁寧に見ていったことが最も効果があったと実感しています」(越知さん)
普段の運用については、アカウントメディアの管理画面に表示されるアクセス数や、号ごとの開封率、回遊率などチェック。そして2週間に1回、社内の他のSNS担当者と会議を開き、よい記事の共通点、あまり読まれなかった記事の共通点について分析を行い、その成果を次のタームに生かしていくという形で取り組んでいきました。
記事タイトルは普段と異なる意識で
ユーザーの動向を分析する中で、配信する記事の選定だけでなく、定時配信面の作り方や見せ方も工夫しました。その一つが、軟らかい印象を与えるタイトル付けです。
軟らかいタイトル付けとは、漢字や仮名のバランスを考え、字面が与える印象を軽やかにすることです。タイトルに漢字が多いと硬い記事という印象を与えてしまい、ユーザーの興味関心を引くことができません。
「LINEはコミュニケーションアプリなので、主に友人や家族との連絡や雑談で使われています。アカウントメディアの配信は、そうしたコミュニケーションの中に入ってくる情報ですし、ユーザーの方も脳のモードが軟らかい言葉を読む態勢になっているので、他のプラットフォームに比べても、より軟らかくなるように意識してタイトルを考えています」(越知さん)
そんなタイトル付けの方法について、思い切った使い方をしているのが、2枠目と3枠目です。
もともと2、3枠目のタイトル文字数は8文字と短いのですが、時には余分な文字を削りに削って、5文字まで縮めることもあるそうです。その理由について、越知さんは「2枠目と3枠目は写真でインパクトを出せますし、1枠目の文字数が多いので、2枠も3枠も8文字全部使ってしまうと、読み疲れを起こす印象があります。むしろ極限まで削ったほうが、タイトルとしても強い印象になり、ユーザーに刺さりやすくなります」と説明します。
掲載する写真に関しても手を抜きません。芸能人のスクープ記事ならば、顔が分かるように寄りでトリミングを行い、芸能人の私服に意外性・情報性があれば全身像が分かるように引きの写真にするなど、本誌の写真ページの編集で培った知見も生かして最適な見せ方を工夫しています。
順位上昇で編集部内も変化 今後もチーム一丸で読者に寄り添う
ユーザーに寄り添った細やかな工夫が実を結び、4位や5位が多かったエンゲージメントランクの順位が少しずつ上昇し始めました。越知さんが「順位が上がっています」「1位になりました!」と編集部に通知すると、部内のアカウントメディアに対する注目度も上がっていきました。
森本さんは「以前から順位は共有されていましたが、4位や5位だとあまり関心がなく、聞き流すことが多かったのです。しかし越知が工夫を重ね、速報で順位を発表して共有するようになり、実際に上がってくると、部内のテンションも上がってきます。順位を上げ、維持できるようにみんなで頑張ろうという意識が芽生えました」と話します。
モチベーション向上の鍵はまだあります。1本では読まれにくい記事にスポットライトを当てることです。
スクープ記事などはSNSを通じてその記事単体で“バズる”一方で、取材を重ねた記事でも記事単体では読まれにくいことがあります。アカウントメディアでは記事を8本セットで配信できるので、1本では目立たない記事も、8本のパッケージに入れば読まれやすくなるそう。LINEに配信すれば読まれる機会を増やすこともでき、部内でも重宝されるようになりました。
「今日は芸能ニュースが足りないと感じたり、もう少しこのテーマの記事が欲しいと思った時には、編集部内で『LINEの配信時間に間に合うように記事を上げてください』と頼むことがあります。雑誌記事の締め切りのような感じですね。すると編集部全員が協力して、配信に間に合うように記事をアップしてくれるようになりました」(越知さん)
こうしてユーザー目線で読みたい記事をタイムリーに配信できるよう、編集部が一丸となって取り組むことで、高いユーザー満足度を維持し続けたそうです。
森本さんは「アカウントメディアは、PV至上主義ではなく、エンゲージメントランクという指標を使って評価されるので、大規模メディアの一人勝ちにならずに、大小さまざまなメディアが競える土俵だと思います」と分析。
その上で「ニュースの届け方や消費のされ方が大きく変化している現在、メディアの基盤を強くするには、多様なチャンネルに対応する必要があると思います。どこか一つに集中するのではなく、なるべく多くのチャンネルにアンテナを張って強化していくことが必要ですし、今後ますますその傾向は強くなるでしょう。そんな変革の時代にあることを意識し、これからも読者の期待に応え続けたいです」と話してくれました。
今後について越知さんに聞くと「これからは追われる立場として、気を引き締めつつ、他のメディアのやり方も参考にしながらこれまでどおり読者に寄り添っていきたいと思います」と意気込みを語ってくれました。
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