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「メディアとして滅びないために」20周年を迎えた4Gamerの“コンテンツと人材の多様化”

2020年から続くコロナ禍。人々の暮らしだけではなく、メディアを取り巻く環境やユーザーのニーズにも変化をもたらしました。

そんな中、2020年8月に総合ゲーム情報サイト「4Gamer.net」は開設から20年を迎えました。Webメディアの黎明期から運営を始め、20年間にわたって支持され続けています。

LINE NEWSでは、4Gamerの創設当初から現在まで編集長を務める岡田和久さんにインタビュー。メディアとしての在り方や、独自の人材採用戦略、あえて4Gamerらしさを出さずに運用しているというLINEアカウントメディアについて話を聞きました。

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※この記事は2020年9月に行ったインタビューを再編集・再掲載したものです

心をつかむべきは“新しい読者”

2020年上半期、新型コロナウイルスの影響による“巣ごもり需要”によってゲーム業界が活況というニュースが多く報道されました。こうした中、4Gamer編集長の岡田和久さんは、「業界自体に大きな変化はない」と見解を示していました。

「巣ごもり需要でゲームが注目され『あつまれ どうぶつの森』などが空前のヒットを飛ばしたことは確かです。ただ、特定のソフトが支持されただけで、業界でエポックメイク的なことが起きたわけではありません。これまでも業界内の調子の上がり下がりは定期的にあったので、個人的には通常通りのゲーム業界という感想です」

4Gamerでは、コロナ禍においてもPV数などに大きな変化は出なかったそう。ステイホームによる影響はほとんどなかったものの、読者層には明確な変化が生じたといいます。

「2017年に、女性向けに特化した『4Gamer女子部(仮)』(以下『女子部』)というコンテンツをスタートしたのですが、とても評判がよく、2020年にかけての1年で女性読者数が倍以上に増えました。女性の拡散力って半端なくて、記事をアップした当日にPV数もRT数もすごい勢いで伸びるんですよ。その力もあって、女性読者が増えているのだと思います。さらに、動画コンテンツも積極的に展開し始めたことで、今までと違う読者に読んでもらえているように感じていますね」

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ゲームに加えアニメや声優など幅広いジャンルの女性向け情報を扱う「4Gamer女子部(仮)」

4Gamerは、2020年8月でサイト立ち上げから20年。それだけ長く続けてきてなお、新たなコンテンツを展開し続けているのは、常に“新しい読者の獲得”を目指しているから。新卒のときからメディアに携わってきた岡田さんいわく「新しい読者を獲得しないと、そのメディアは読者とともに年を取って滅びてしまう。これはメディアの宿命」とのこと。

「僕の望みは『4Gamer』というブランドを残すことです。だから、滅んでしまうことは避けたい。生き延びるためには、時代とともに変わる読者のニーズに応じて扱うテーマを変え、新しい読者をつかむことが肝だと考えています。実際に『女子部』や動画コンテンツが功を奏して、読者層が若返っている実感があります」

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サイト開設から20年を伝える記事

「履歴書は見ない」 多様化する読者に応えるための採用戦略

4Gamerは、欧米発コンピューターゲームの専門サイトとして2000年にオープンしました。2001年にはオンラインゲーム中心にシフトし、2006年頃からコンシューマーゲームを扱い始め、現在はスマホ向けゲームの情報も届けています。時代とともに扱うテーマを広げ、メディアそのものを多様化させてきたのは「必要とする読者がいるから」。

「読者の需要があるなら、やるべきですよね。ただし、業務命令を発し、強制的にスタッフにやらせることはありません。新しいコンテンツを発足するときは、必ず希望者にやってもらいます。『女子部』も動画コンテンツも、やる気のあるスタッフがいたから立ち上げました。なぜそうするかというと、スタッフ自身が面白いと感じる記事やコンテンツでないと読者に面白さが伝わらないから。『動画作って』と命令して作らせることはできても、それで面白いコンテンツができるとは到底思えないじゃないですか」

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読者のニーズに合わせて扱うジャンルを拡大

ゲームを愛する読者に発信している専門メディアだからこそ、スタッフの愛情やテンションがとても重要で「作り手の好き嫌いは、読者にすぐバレる(笑)」とのこと。“やりたいスタッフの自主性に任せる”という方針で新コンテンツを生み出し、新たな読者を獲得していくためには、多様なスタッフ陣が必須。だからこそ、「人材採用で“ゲーム好きであること”は重視していない」と、岡田さんは教えてくれました。採用面接においても履歴書は見ず、相手と対話し、人となりを見て決めていくそう。

かつては“ゲーム好き”を採用していたのですが、同じ思考の人ばかりになると、イエスマンの集合体になってしまうんですよね。これではメディアが続いていかないと思って、7~8年前から採用に多様性を求めるようになりました。今はゲーム業界やWeb業界に限らず、薬屋にバイク屋、歯科助手など、いろんな経歴の社員がいます(笑)。メディアもいい方向に動いてきていると感じています」

アカウントメディアでは“4Gamerらしさ”を押し付けない

専門メディアである4Gamerの読者はゲームに対する関心が高い人たちが中心だったため、たまにスマホでゲームをするくらいの一般層には情報が届きにくいという課題があったそうです。そんな中、4Gamerは新たな読者を獲得するため、2016年にLINEアカウントメディアに参画しました。

「アカウントメディアであれば一般層にアプローチできるという考えは正解でした。4Gamerの読者と比べると、友だち登録してくれる方が圧倒的に若かったのです。ただ、自社サイトの流入はほとんどなかったため、4Gamer本体を見るコアなゲーマーと、アカウントメディアを見るライトな一般層というすみ分けができました。当初の目的とは違いましたが、僕たちにとっては非常に理想的な展開でしたね」

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「理想的」と語る理由は、ゲームにそこまで詳しくない読者に響く記事の傾向を読み取ることができ、支持される記事の指標になるから。アカウントメディア担当の編集部デスクは「4Gamerらしさを押し付けないことが重要」という運用方針を教えてくれました。

「自社サイトはコアゲーマー向けのインタビューやハードウェアのレビューが支持されますが、ゲームへの関心が低い人が読んでも面白くないはずです。実際に、自社サイトとアカウントメディアでは読まれる記事が全く違います。なので、アカウントメディアに掲載する記事は『自社サイトで注目されたから』という理由では選びません。見出しも読者を限定せず、幅広い層が興味を持てるものにできるよう、頑張っています。アカウントメディアで得た知見は、サイトの編成などにもフィードバックし、メディアそのものを磨く要素の一つになっています」(編集部デスク)

アカウントメディアは新しい読者獲得の場であり、一般層のニーズを知るマーケティングの場であると同時に「ゲーム業界を知ってもらうきっかけの場でもある」と岡田さんは話します。

日本はゲームの最先端をいく国ですが、ゲームの立場が弱い。子どもが『ゲーム業界で働きたい』と言っても反対する親は多い。もし業界の地位が上がり膨大な投資が行われれば、優秀な人材を採用しやすくなって、いいゲームが作られる。そして、プレイヤーが増え、お金が回るという循環が生まれます。その状況を形成するため、さまざまな方法で業界の地位を上げたいのです。そのためにも、まずはいろいろな人にゲーム業界を知ってほしいですね」

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