「すべては読者のために」テストする女性誌LDKに聞くコンテンツ作りの流儀
「スーパーで買える食器用洗剤の中で、油を落としやすくて、泡持ちがよいのはどれ?」
「歯磨き粉を変えたいけど、たくさんありすぎてどれを選べばよいか分からない…」
暮らしの中で生まれるふとした買い物の悩み。そんな悩みに応えてくれるのが、晋遊舎の発行する月刊誌「LDK」です。
“テストする女性誌”として、読者に代わって日用品などをあらゆる角度から徹底的に検証。消費者目線で使いやすさや使用感を本音で紹介する記事が人気を集めています。
2012年の創刊以来発行部数を伸ばし、現在約20万部を発行するLDK(ミニ版含む)。LINEアカウントメディアでも高いユーザー満足度を誇っています。
その裏にある“読者第一のコンテンツ作り”について、LDK総編集長の木村大介さんと、アカウントメディアの運用を担当する西尾記代子さんに伺いました。
読者の声から生まれ、読者の声に寄り添い続ける雑誌
編集部と専属のラボ部員、そして各分野のプロフェッショナルが商品を徹底検証して書く記事が支持されるLDK。「シンプルに、読者が求めているものを作っているからだと考えています」と好調の理由を分析するのは、LDK事業部全体を統括する木村大介さん。“読者の声から生まれた”という、雑誌誕生の経緯を教えてくれました。
「弊社には同コンセプトで男性読者向けにガジェットやアウトドア用品などを特集している『MONOQLO』や『家電批評』といった雑誌があるのですが、サブ企画として食品や洗剤の比較検証記事を載せたら、ターゲットではないはずの女性読者から思わぬ反響がありました。買い物に行くと膨大な数の商品があって、いつもどれを買えばいいか悩んでいたと。こういう企画をもっとやってほしいという声に応えて生まれたのがLDKなんです」
ただ、創刊時には苦労もあったそう。女性がターゲットの雑誌を作るのに、当時の編集部にはほとんど女性がおらず、特に既婚女性は一人もいなかったからです。暮らしぶりが違えば、感性も違うもの。考えた企画が本当に読者にウケるのか、編集部内で確かめることができなかったのです。
「そこでもう、読者自身に聞いてしまおうと。アンケートに答えてくれた方々に直接コンタクトを取って、ご本人やその友人知人に直接話を聞きに伺いました。毎号ご意見を伺っているうちに、ちょっとしたコミュニティのようになってきて、今では主婦を中心に50人ほどの方とカジュアルに連絡が取り合える関係です。当事者からお話を聞くと思わぬ発見があるので、毎月欠かさず座談会やヒアリングを行っています」(木村さん)
新型コロナウイルス感染拡大の中でも、読者の声を聞くスタイルは堅持。毎月の座談会もZoomを使って継続しているそうです。コロナ禍の中で行った「疲れない晩ごはん」や「時短家事」といった特集は、読者のおかげで大好評な企画となったそう。タイトルを聞いて“お手軽レシピ”などを集めた企画なのかと思いきや…。
「私たちも、最初はそのつもりでした。ところが読者に企画案を話してみると、彼女たちが“疲れ”を感じているのは、料理そのものとは限らないことが分かりました。スーパーの売り場の回り順だとか、なににでも使える調味料だとか、洗い物を減らす調理法だとか…。結果、そうしたテクニック紹介をメインにして、レシピはサブで少し載せるだけにしました」(木村さん)
ニッチな情報はWebで輝く 読者ニーズを隙間なく満たす工夫
支持を集めるのは雑誌だけではありません。LDKの版元である晋遊舎が発行する雑誌のコンテンツを集約したWebメディア「360.life」も、コロナ禍の中で過去最高の月間PV・UUを記録。デジタル展開においては、長く読まれ続ける記事の比率を増やすことを意識していると言います。
「新しさが求められる雑誌ではシーズンやトレンドに関する企画が多くなりますが、そうした企画はWebでは瞬間的に跳ねても、その後読まれなくなります。そうした記事も人を呼び込むという意味ではもちろん大事ですが、長い期間ずっと読まれる記事の方が、Webメディアのビジネスとしてはありがたい。雑誌に載せるにはニッチすぎる情報や細かすぎて誌面には書き切れない情報が、実は検索されて読まれていることがあるので、そういう息の長い記事を増やしている最中です。ある意味、雑誌よりディープな情報が読まれるということでもあるので、ニーズに応えるという意味で読者に貢献できているのかなと思いますね」(木村さん)
LINEでは雑誌にはないオリジナル記事も配信
さらなる読者層拡大を図るべく、晋遊舎はLDKと、美容に特化した姉妹誌「LDK the Beauty」の2つの媒体でLINEアカウントメディアに参画しています。
「雑誌自体を全く読まないという人も増えている中で、存在を知っていただくきっかけになればと考えました。実際、紙とは違う読者層にリーチできている実感がありますね。LDK the Beautyの本誌は30代の読者が中心ですが、アカウントメディアの読者はもう一回り若い世代。本誌を知らない人も多いので“テストする女性誌”を知ってもらうために、記事の冒頭で、商品の検証をしていることをしっかりと見せるよう意識しています」
そう振り返るのはLDKとLDK the Beautyの両アカウントの運用を担当する西尾記代子さん。現在は制作担当と複数名体制を取っているものの、運用開始当初は雑誌からの再編集をベースとした記事の制作、入稿、分析などを全て一人で担当していました。
しかし、どれだけ忙しくても読者目線を徹底するのがLDK流。本誌からの再編集記事に加え、LINEユーザーに響くオリジナル記事も立ち上げました。
「本誌の読者にもアカウントメディアを読んでほしかったのですが、雑誌の再編集記事ばかりでは読む気にならないなと思いまして。なにか独自の企画をやろう、どうせやるならLINEユーザーにウケるものをやろうと考えました。リサーチしてみると、LDK the Beautyが属する女性誌カテゴリーではファッション雑誌が圧倒的に人気と分かりファッションネタをやろうと決めました。ファッション系の人気ブロガーさんにご協力いただき、コーディネート、モデル、写真、イラストと全部ブロガーさんにお任せしています。他誌のファッション記事とは違った魅力を感じてもらえているのか、人気の企画に成長しています」(西尾さん)
本誌、Web、アカウントメディアと、媒体が変わっても常に中心にあるのは“読者第一主義”。今後もその姿勢が変わることはありません。
「全てが読者のためのコンテンツ。“テストする雑誌”という言葉に注目されることもあるんですが、実はテストって手段に過ぎなくて。読者の利益になるからやっているだけなんです。コロナで世の中の状況が変わっても、常に読者第一のコンテンツを作り続けたいですね」(木村さん)
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