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琉球新報・田吹記者が受賞 沖縄県内外に戦争の記憶を伝える

LINE NEWSでは2019年、LINEユーザーの心を動かした“記事”とその書き手を表彰する「LINEジャーナリズム賞」を創設しました。メディアや話題の人だけではなく、記事や書き手がより多くのユーザーの目に触れる場を設けることで、良質なコンテンツが世の中に増えていくサイクルを後押ししたいという思いから始めた取り組みです。
発表の場は、LINE NEWSが主催する「NEWS AWARDS」。その年を彩る「話題の人」や「メディア」なども同時に表彰するニュースの祭典です。

2020年はどのような記事が受賞したのでしょうか、選考過程や手掛けた記者の声、授賞式の模様をご紹介します。

「220万本から1本」に琉球新報・田吹記者の記事

2020年にLINE NEWSに配信された記事は約220万本。その中から、琉球新報デジタル推進局デジタル編集グループが取材、田吹遥子記者が執筆した「戦争の記憶、いかに次世代へ?Coccoが明かす『祖父母の教え』」が選ばれました。

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▲コロナ禍で開催した「NEWS AWARDS 2020」。”密”を避けて、授賞式を行った。

数字と3つの観点から段階を踏んで選出

選考は、まず記事の閲覧数やユーザーのアクションを中心に「その記事に対してユーザーからどれくらいの反響があったか」を係数として算出。上位の記事の中から、①新しい角度で物事を取り上げたか ②新しい見せ方で伝えたか ③読んだ人の心を深く動かしたかの3つの観点で記事を絞り込みます。さらに、社内の経験豊富なメンバーらによる選考委員会で、記事のどこに感銘を受けたかや読んだ後の心境の変化などを議論。ノミネート記事10本と大賞が決定されます。2020年からは、新たにインターネットメディア協会理事・白鴎大学特任教授の下村健一氏に特別アドバイザーを務めていただくことになりました。
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記事への思い「いろんな人と一緒に考える機会を」

受賞した記事は2020年8月に配信したもの。アーティスト・Coccoさんが戦争を次世代に語り継ぐことについて、沖縄の歴史やCoccoさんのルーツなどを交えて伝えた記事です。「歌うことで」「身近なところから」というCoccoさんの考えやアクションを通じ、幅広い世代に戦争を考える機会を提供したことや、辺野古の基地問題などにも触れつつ、課題意識を持って過去・現在・未来の沖縄を伝えていることが受賞につながりました。また、コロナ禍におけるCoccoさんのSNSでの活動も織り交ぜられており、彼女の優しさと力強さを間近で感じられる内容でした。

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▲LINEのニュースタブトップに、2020年8月に掲載。

授賞式には、執筆した田吹記者がオンラインで出席。取材の様子や配信時の思いについて振り返っていただきました。「沖縄県の内外や世代を問わず、いろんな人と一緒に考える機会を作りたかったんです」。戦争や沖縄のことを多くの人に届けたいという思いで記事を手掛けたという田吹記者。Coccoさんの祖母が、Coccoさんに一度だけ語ったという戦争の話を取材を通して聞くことができ「託された思いでした」と振り返ります。これまで沖縄の問題に関する記事を制作・発信しても、沖縄に関心がない人や若い層に届かないことを課題に感じていたそうですが、今回LINEで配信した記事について「普段届かない層にも届けることができたのが一番大きかったこと」と意義を語りました。

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▲授賞式の様子。ビデオ通話で下村氏と対談する琉球新報・田吹遥子記者。

授賞式では、記事の見せ方について特別アドバイザーの下村氏と意見を交わした田吹記者。下村氏から、LINE NEWSでの伝え方が紙面とは異なることについて問われると「スマホやネットで読者から記事がどう見えているかを改めて考える機会になり、写真や動画を多く入れることが読みやすさにつながるなど、発見がありました。とても楽しい作業だったので、今後も出し先によってやり方を変えながら発信していきたいです」と笑顔で答えました。

「敷居の低さ」と「天井の高さ」の両立へ

下村氏にはノミネート記事10本それぞれに総評を寄せていただきました。中でも下村氏は、田吹記者の記事の書き出しの巧みさに着目。以下のようにコメントしました。
「『戦争の記憶、いかに次世代へ?』という大見出しから、多くの人は決まり文句の『忘れてはならない』を無意識に想起するでしょう。ところがいきなり第一文で『忘れなさい』という真逆の一言。“つかみ”の大切さは全ての発信に共通するポイントですが、離脱が容易なネット記事では特に重要です。この書き出しは、そのつかみに見事に成功しています」
また、記事の終盤にCoccoさんが歌うTwitterの動画が埋め込まれていたことにも触れ「記事全体がこの歌を聴くためのライブのステージトークだったよう」と評価しました。

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▲20枚の豊富な画像に加え、記事内容とリンクするTwitter上の歌唱動画を埋め込み、より深く読者を引き付けた。

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ジャーナリストとしてのキャリアの中で、志の高い記事に数多く出会ってきたという下村氏。ノミネートされた10本の記事について、ジャーナリズム性の高い内容をスマートフォンで手軽に読むことができる「敷居の低さ」に焦点を当て、こう総括しました。
「“天井が高い記事”って、つられて入り口の敷居も高くなりがち。そこで、敷居を低くしてみると、今度は天井が低くなってしまう。なかなか両立しないんですよね。今回ノミネートされた記事は低い敷居と高い天井を両立しようとすごく頑張っていて、頼もしいなと思いました」
これからもLINEジャーナリズム賞が、ユーザーと書き手との橋渡しとなれば幸いです。

NEWS AWARDS 2020「LINEジャーナリズム賞」ノミネート記事

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「LINE NEWS」公式のnoteでは、ジャーナリズム賞に込めた思いや、創設の経緯を記事にしています。