帰れない“DASH村” 取材続けた記事は「思いの集合体」LINEジャーナリズム賞
2021年のLINEジャーナリズム賞に輝いた朝日新聞withnewsの記事"「DASH村」人が住めなくなって10年、春には学校も…時計は止まったまま"の象徴的な一節です。2021年にLINE NEWSに配信された300万本を超える記事の中から選出されました。
「記者自身が前に出たストレートな表現は、通常の紙面では見られない。だがここ(LINE NEWS)では、それができる。そして届く。しかも刺さる」と賞のアドバイザーからも高い評価を受けました。
この記事は、三浦英之さんが取材・執筆し、丹治翔さんが編集を手掛けました。LINE NEWS AWARDS 2021の表彰式で、2人が記事に託した思いを明かしました。
「目をそらしてしまって本当にいいのだろうか」
福島県の南相馬支局の記者として、福島の人々と共に生活しながら取材を続けてきた三浦さん(※現在は岩手県の一関支局長)。表彰式では、多くの人が故郷や自宅に戻れていない地域の実情を説明し、思いを伝えました。スピーチ全文を紹介します。
動画や構成、一人称…届けるために凝らした工夫
表彰式では、賞の特別アドバイザーを務める下村健一さん(元TBS報道キャスター・白鴎大学特任教授)と、若い世代やスマートフォンユーザーにどう伝えるか、意見を交わす場面もありました。
編集を手掛けた丹治さんは、朝日新聞社内でもスマートフォンで記事を読んでもらうよう特化して取り組む「withnews編集部」に所属し、日ごろから外部の提携先とも積極的にコラボレーションしています。LINE NEWSとは「帰れない村」について、別企画で共同制作したこともありました。
今回の企画も三浦さんから提案があった際「若い世代・スマホを使っている世代にいかにリーチするかを考えた」と出し先へのこだわりがあったといいます。「結果的に通常ではリーチできていなかった若い層にもしっかりと被災地の実情が届いた。LINEでのシェアが数万単位であったと聞いているので、この記事がコミュニケーションの起点にもなったことは大変うれしい」とコメントしました。
また、記事の特徴でもある「動画」について、丹治さんが制作の背景を説明。
「津島地区で家の写真を住民と共に一戸一戸撮影するプロジェクトを実施したフォトジャーナリストの野田雅也さんに協力いただき、撮影した蓄積の中から記事の場面に合うような映像を入れました。文中の挿入動画はゆったりした感じですが、冒頭の動画は10年の時を、日付を矢継ぎ早に回すことによって表現し、どんな話なんだろうと期待を持ってスクロールしてもらえるような構成にしました」
そしてもう一つの特徴が「記事の筆致」です。三浦さんは、新聞記者の仕事とともに「ルポライター」の肩書きでノンフィクションの書籍を書いています。新聞記事は、最初に伝えたいことや重要なことを書く“逆三角形”の文章構成になる一方、本を書く際は伝えたいことを“クライマックス”として最後に書いているといいます。
今回LINEでの掲載においては、比較的文字数のボリュームが多く書けたため本に似せた構成とし、さらに新聞では使わない「僕」という一人称を使用したことで記事を読者に印象付けました。
「ただニュースを伝え、読んでほしいというだけではなく、届かせるにはどういう表現を使えばいいのか考えなければなりません。ノンフィクションでは主語は『私』ですが、今回はLINE向けに、10代にも届くよう『僕』という“もう一段優しい”一人称を使うことにしました」
「『僕』が福島県の被災の状況を見てインタビューしていく形にすることで、読んでいる方が感情移入しながら、あたかも自分が取材しているかのように感じ取れるようにし、最後に伝えたいことを書きました。つまり、ニュースを伝達するのではなく、物語を読ませ、より深いところに届けるような手法を採用しました」
最後に、三浦さんは記事への思いについてこう語りました。
「僕たちはとにかく“いいもの”を作りたいと思って取材をしていますが、(読者に)少し届きにくくなっているのではという不安を持っています。なので、今回LINEのように新しいプラットフォームで記事を広げていただいた時に、僕らは本当に勇気づけられているし、できるんだなと感じたのは大きなことですね」
LINEジャーナリズム賞 ノミネートは10記事
特別ページでは受賞記事のほか、ノミネートされた記事10本の全文が読めます。
また、賞の特別アドバイザーとして昨年より参画している下村さんや、亀松太郎さん(ウェブメディア「DANRO」編集長)、治部れんげさん(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授)、清水康之さん(NPO法人自殺対策支援センターライフリンク代表)からの総評を掲載しています。
LINEジャーナリズム賞の表彰式の様子は動画でもご覧いただけます。